
兵庫県で工場を借りようとするとき、あるいは保有する工場を賃貸に出そうとするとき、多くの経営者・オーナーが「相場がわからない」という壁に突き当たります。理由は単純で、兵庫県の工場賃料は市区や規模、築年数によって大きく振れ、ひとつの「県平均」では実態を捉えられないからです。本記事は、この課題に対して兵庫県の貸し工場の実成約データを集計し、判断材料を提示します。
対象読者は、①兵庫県で工場を借りたい製造業・物流業の経営者、②保有工場の賃料設定に悩むオーナー、③関西市場を調査中の不動産投資家の3者です。結論を先に述べると、兵庫県の貸し工場の坪単価中央値は月額¥4,720/坪で、阪神間(尼崎・伊丹)が高く播磨・神戸西部が安いという明確な地理的グラデーションがあり、さらに「区画が小さいほど坪単価が高い」という規模の逆相関が働いています。以下、実データで一つずつ確認していきます。
まず全体像です。兵庫県の貸し工場(賃貸成約)を実データから抽出すると、坪単価を算出できた68件の月額坪単価は以下のとおりです。
| 指標 | 数値 |
|—|—|
| 坪単価 中央値 | 月額 ¥4,720/坪 |
| 坪単価 平均値 | 月額 ¥4,952/坪 |
| 坪単価 最小〜最大 | ¥1,233 〜 ¥11,364/坪 |
| 月額賃料 中央値 | 28.1万円/月 |
| 建物面積 中央値 | 207.2㎡(約62.7坪) |
坪単価の最小と最大には約9.2倍の開きがあります。これは兵庫県の工場賃貸市場が、都市部の小規模区画から郡部の大型平屋まで、性格の異なる物件を内包していることを示しています。「相場は坪いくらか」という問いに一本の数字で答えられないのは、この分散が理由です。したがって実務では、県中央値の¥4,720/坪を出発点としつつ、後述する市区・規模・築年の3軸で補正して読む必要があります。
本記事の数値は、REINS(不動産流通標準情報システム)の実成約データを独自集計したものです。集計条件は以下のとおりです。
– データソース:area_master_kansai_v1.csv(関西97市区町村のREINS成約集計)/reins_kansai_seiyaku_combined.csv(関西の賃貸成約1,994件の生データ)
– 対象:兵庫県内・種目「工場」の賃貸成約
– サンプル数:兵庫県工場 全70件のうち、坪単価を算出できた68件を分析対象
– 期間:成約年2023〜2026年
– 坪単価の定義:月額賃料 ÷ 建物面積(坪換算)で算出した月額坪単価
– 集計値:外れ値の影響を抑えるため、原則として中央値(median)を採用
サンプル数は市区によって大小があります。本記事では統計的な信頼性を担保するため、原則として成約3件以上(n≥3)の市区のみをランキングに採用し、各表にサンプル数(n)を併記しました。中でも神戸市長田区(16件)と尼崎市(12件)は10件以上のまとまったサンプルがあり、相場の代表性が比較的高い市区です。逆にサンプルが2件以下の市区は参考値にとどまるため、本文では取り上げていません。
兵庫県の貸し工場を市区別(n≥3)に坪単価中央値の高い順で並べると、次のようになります。
| 順位 | 市区 | 成約数 | 坪単価中央値 | 月額賃料中央値 | 建物面積中央値 |
|—|—|—|—|—|—|
| 1 | 尼崎市 | 12件 | ¥7,183/坪 | 24.2万円 | 104㎡ |
| 2 | 伊丹市 | 5件 | ¥5,498/坪 | 55.0万円 | 462㎡ |
| 3 | 三木市 | 3件 | ¥5,497/坪 | 33.0万円 | 198㎡ |
| 4 | 姫路市 | 6件 | ¥4,886/坪 | 63.2万円 | 392㎡ |
| 5 | 明石市 | 3件 | ¥4,783/坪 | 55.0万円 | 380㎡ |
| 6 | 加古郡稲美町 | 3件 | ¥4,656/坪 | 33.0万円 | 234㎡ |
| 7 | 神戸市兵庫区 | 3件 | ¥4,399/坪 | 66.0万円 | 496㎡ |
| 8 | 神戸市長田区 | 16件 | ¥3,816/坪 | 8.7万円 | 73㎡ |
| 9 | 神戸市須磨区 | 4件 | ¥3,458/坪 | 17.9万円 | 174㎡ |
| 10 | 多可郡多可町 | 3件 | ¥2,105/坪 | 55.0万円 | 864㎡ |
首位の尼崎市(¥7,183/坪)と最下位の多可郡多可町(¥2,105/坪)では、坪単価に約3.4倍の差があります。大阪に隣接する阪神間の尼崎・伊丹が上位を占め、播磨内陸部(多可町)や神戸市西部(須磨区・長田区)が下位に沈む構造がはっきり出ています。工場立地の価値が「大阪都市圏への近さ」で規定されていることを、賃料が裏づけています。
なお、坪単価と月額賃料の順位が一致しない点に注意が必要です。たとえば尼崎市は坪単価が県内トップですが、成約物件の建物面積中央値が104㎡と小ぶりなため、月額賃料の中央値は24.2万円にとどまります。一方の姫路市・神戸市兵庫区は坪単価では中位ですが、面積が大きい(392〜496㎡)ため月額では60万円台に達します。「坪単価の高さ」と「1件あたりの支払額」は別物であり、両方を見て判断する必要があります。
第2の軸は建物面積です。区画規模ごとに坪単価中央値を集計すると、明確な逆相関が現れます。
| 建物面積帯 | 成約数 | 坪単価中央値 |
|—|—|—|
| 100㎡未満 | 17件 | ¥5,452/坪 |
| 100〜199㎡ | 16件 | ¥5,178/坪 |
| 200〜329㎡ | 9件 | ¥3,902/坪 |
| 330㎡以上 | 26件 | ¥4,242/坪 |
100㎡未満の小規模区画(¥5,452/坪)は、330㎡以上の大型区画(¥4,242/坪)の約1.29倍の坪単価です。これは工場・倉庫マーケットに共通する「小規模区画プレミアム」で、小さい区画ほど1坪あたりの単価が割高になる傾向を示しています。背景には、小規模物件は貸し手側の管理コスト・空室リスクが相対的に高いこと、そして小回りの利く区画を求める小規模事業者の需要が厚いことがあります。
借り手の視点では、「面積を少し欲張って広い区画を借りたほうが、坪単価では割安になる」という判断につながります。逆にオーナーの視点では、大型の一棟を分割して小区画で貸し出せれば、坪単価を引き上げられる可能性がある、という戦略が読み取れます。
第3の軸は築年数です。築年帯ごとの坪単価中央値は次のとおりです。
| 築年帯 | 成約数 | 坪単価中央値 |
|—|—|—|
| 築20年未満 | 9件 | ¥4,990/坪 |
| 築20〜29年 | 8件 | ¥3,695/坪 |
| 築30〜39年 | 14件 | ¥4,629/坪 |
| 築40〜49年 | 16件 | ¥5,202/坪 |
| 築50年以上 | 15件 | ¥2,975/坪 |
注目すべきは、坪単価が最も高いのが築40〜49年(¥5,202/坪)で、築20年未満(¥4,990/坪)を上回っている点です。工場賃料は住宅ほど築年数に素直には連動しません。理由は、工場の価値が建物の新しさよりも「立地・接道・電力容量・天井高といった機能条件」に強く規定されるためです。都市部の好立地に建つ築古工場は、築年数が進んでも高い賃料を維持します。一方で、明確に坪単価が下落するのは築50年以上(¥2,975/坪)の水準に達したときで、ここではじめて老朽化が賃料を押し下げます。
つまり「築古だから安い」という単純な図式は、工場賃貸では成り立ちません。築30〜49年のゾーンは、立地さえ良ければ新築同等以上の賃料が付き得る、狙い目の年代とも言えます。
成約年別の坪単価中央値を追うと、直近3年は上昇基調にあります。
| 成約年 | 成約数 | 坪単価中央値 |
|—|—|—|
| 2023年 | 20件 | ¥3,695/坪 |
| 2024年 | 20件 | ¥4,806/坪 |
| 2025年 | 19件 | ¥5,497/坪 |
| 2026年(年途中) | 9件 | ¥3,996/坪 |
2023年の¥3,695/坪から2025年の¥5,497/坪へ、坪単価中央値は約1.49倍に上昇しています。2026年は年途中かつサンプル9件のため単年の水準は変動しやすく、傾向の判断には向きません。それでも2023→2025年の一貫した上昇は、建築費・地価の上昇や、工場・物流施設への需要増を反映したものと読めます。オーナーにとっては賃料改定の追い風、借り手にとっては「早く決めるほど有利」な局面が続いていると言えます。
ここまでの数値から、兵庫県の貸し工場市場について3つの構造的インサイトが導けます。
インサイト1:賃料は「大阪都市圏への近さ」で決まる。 阪神間の尼崎(¥7,183)・伊丹(¥5,498)が上位を占め、播磨内陸・神戸西部が下位という地理的グラデーションは、工場立地の価値が大阪経済圏へのアクセスで規定されていることを示します。エリア選定は、賃料と物流効率のトレードオフとして考えるべきです。
インサイト2:規模の逆相関が働く。 100㎡未満の小区画(¥5,452)が330㎡以上(¥4,242)を上回る「小規模区画プレミアム」は、借り手・オーナー双方の面積戦略を左右します。単価で見るか総額で見るかで、最適な区画サイズは変わります。
インサイト3:築年より機能が価値を決める。 築40〜49年が最高値を付ける一方、築50年以上で初めて下落する事実は、工場の賃料が建物の新しさではなく立地・機能条件に依存することを示しています。「築古=割安」という思い込みは、好立地物件では通用しません。
兵庫県で工場を借りる企業は、以下の3つの軸で物件を評価すると失敗を減らせます。
1. エリアは賃料と物流のトレードオフで選ぶ。 大阪都市圏へのアクセスを最優先するなら尼崎・伊丹(坪¥5,500〜7,200)、コストを抑えたいなら姫路・播磨や神戸西部(坪¥3,400〜4,900)が候補になります。自社の配送先分布と照らし、坪単価差が物流コスト差に見合うかを検証してください。
2. 必要面積の一段上まで検討する。 小規模区画は坪単価が割高になるため、100㎡台と200㎡台の坪単価差(¥5,178 vs ¥3,902)を踏まえ、将来の増床余地も含めて「少し広め」を比較検討すると、坪単価で有利になる場合があります。
3. 築年数だけで足切りしない。 築30〜49年の物件は立地が良ければ機能十分で、新築より賃料効率が良いことがあります。天井高・電力容量・接道幅といった機能条件を実地で確認し、築年数のイメージで候補を外さないことが重要です。
保有工場を賃貸に出すオーナーは、次の3つの戦略が有効です。
1. 市区中央値を基準に、規模で補正する。 自物件の所在市区の坪単価中央値(本記事の市区別表)を出発点に、建物面積が小さければ上振れ、大きければ下振れの補正をかけて賃料を設定します。県平均一本での設定は、機会損失か長期空室のどちらかを招きます。
2. 分割貸しで坪単価を引き上げる。 大型一棟は坪単価が下がりやすいため、区画分割が可能なら小区画化して「小規模区画プレミアム」を取りにいく選択肢があります。ただし分割工事費・管理手間との採算を必ず確認してください。
3. 上昇局面を賃料改定に活かす。 2023→2025年の坪単価上昇(¥3,695→¥5,497)を踏まえ、既存契約の更新時には市況水準との乖離を点検します。長く据え置いた賃料は、相場から乖離している可能性があります。
本記事の要点を再掲します。
1. 兵庫県の貸し工場の坪単価中央値は月額¥4,720/坪、レンジは¥1,233〜¥11,364と分散が大きい。
2. 市区別では尼崎(¥7,183)・伊丹(¥5,498)など阪神間が高く、播磨・神戸西部が安い。最大約3.4倍の地域差。
3. 面積は逆相関。100㎡未満(¥5,452)が330㎡以上(¥4,242)を上回る「小規模区画プレミアム」。
4. 築年は単純な負の相関ではなく、築40〜49年が最高値。下落は築50年以上で明確化。
5. 直近は上昇基調(2023年¥3,695→2025年¥5,497)。借り手は早期決定、オーナーは賃料改定の好機。
兵庫県で工場を「借りたい」「貸したい」いずれの場合も、次のアクションは自物件・希望エリアの市区中央値を起点に、規模と築年で補正した具体的な賃料レンジを持つことです。にっぽん倉庫(関西版)では、兵庫県を含む関西2府の工場・倉庫物件を市区・面積で絞り込んで検索でき、条件に合う物件はAIマッチングで新着通知を受け取れます。保有物件の賃料査定をご希望のオーナー様は、査定ページからお問い合わせください。
一般社団法人にっぽん福福
代表理事
福本 浩一
3歳の頃に両親が離婚し、母親のもとで妹と3人で暮らす。その後、母方の祖父が経営するバッティングセンターで幼少期よりお手伝いをする。
その頃に祖父から『子どもは宝』と教えてもらい地域の子ども達に喜ばれる貢献活動をすることの大切さを学ぶ。
大学卒業後、大手不動産会社へ入社。不動産業を学んだ後に、祖父の経営する会社へ入社。同時に青年会議所に入会する。
青年会議所で社会貢献や地域貢献について学び、祖父の経営する会社でも営業の傍ら社会貢献や地域貢献活動に尽力する。
社会貢献活動を通じて「他の企業にも社会貢献の重要性を広めたい」「社会貢献が当たり前」な社会を実現したいと考え、一般社団法人にっぽん福福を設立する。
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